ブルベも始めました

2016年からブルベも始めました。

SR600紀伊山地の世界遺産

新設されたSR600紀伊山地世界遺産,獲得標高10756mで制限時間は60時間。2年前のAR四国の600kmで獲得標高8696mを37時間で完走できたので,なんかとなるだろうとエントリー。

朝にスタートすると宿泊の選択肢は限られていて,初日は新宮,二日目は龍神温泉になるのだろうが,週末桜シーズンの龍神温泉は一人客が手頃な値段で遅くなってもチェックインができるところが見つからなかった。初日に230km走るので,残り370kmを一気に走り通す覚悟を決める。BRM525四国400kmの獲得標高が7087mなので,その練習。一昨年の四国400kmが24時間なので,疲労の蓄積を考えると2割増しの28時間くらいでいけるんじゃないかと皮算用

気温は最高気温20度,最低気温5度と予想して,Finetrackのアクティブスキンにジオラインの薄手長袖,CH1200の裏起毛ジャージ。夜はさらにCastelliの防風防寒ジャージ。下はNano Flexのビブタイツ。中厚のウールソックス。グラブは指切りと10度対応の指付きの2セット。

補給場所が限られるので,デイパックに菓子パンと柿ピーを入れておく。他には一口ようかんにブルボンのスローバー,グリコの一口サイズのチーズケーキ。あとは2Runとアミノバイタル

朝9時にセブンイレブンりんくう松原店を出発。しばらくは街中を走るので信号で止められる。郊外に抜けてから葛城山への登りが始まる。15%超えるコンクリート舗装が断続的にあらわれていきなりの試練。ヒルクライムレースじゃないから慌てる必要はない。じわじわと登り続ける。まずはPC2に到着。序盤で平均時速11kmでちょっとだけ貯金。

下りに入るとコンクリート路面で跳ねて,ブレーキかけても減速がおいつかない。グレーチングに大きな隙間があったり気が抜けない。下り終えると次の丹生都比売神社への登り。葛城山ほどではないが,さっきの登りで脚を使い果たしたので惰性で脚を回してるだけ。画像では大きな神社に見えたが,参道は路地と思うくらいしかない。

少し登ってあとは下り。紀ノ川沿いは追い風,桜がきれいに咲いている。途中で護摩壇山とか高野山への看板を見て,「ここから50kmぐらいじゃないか。400kmぐらいの遠回りか」とげんなり。昼過ぎだし,そろそろコンビニがなくなる区間に入るので九度山のローソンに寄ってオムライスとプリン。ゆるく登っている区間だけど,追い風もあってあまり負担がかからず,モンベル五條店に到着。

近鉄の線路が見えたところで,吉野山に登る。登って下りると線路の向こう側に戻ってくるのだが,PCのためにぐるっと登って回らされる。登って駐車場の向こう側は歩行者天国だった。自転車から降りて押し歩き1.5km。カーボンソールで歩き続けるのは膝と足首にくる。ブルベじゃなくて観光なら楽しめるのだろうが,今日はいち早く通り抜けたいだけ。やっと歩行者天国を抜けるが,今度は駐車場へ向かう歩行者に気を使う。やっとコウヤマキの群落看板に着いた。

下りは走りやすく,あっという間に向こう側についた。次のPC6七色ダムまでは90km近い長丁場。今日の大きな登りは40km先のあと1つ。15分間隔の対面通行待ちに出会ったので,休憩も兼ねて道の駅杉の湯川上で柿の葉すし食べて,ボトルに補給。今日は空気が乾燥しているのか気温高めなのに,汗は流れないしトイレにもあまり行ってない。対面通行開始に合わせて再スタート。自動車の流れにのって走らないと危ないので,頑張って最後尾の自動車にくっついて走る。幸い大型トラックがゆっくり目で走っているようで流れにのったまま10分ほどで交通規制区間を通り抜けられた。トンネルが続くループを抜けて長めのトンネルを抜けると,あとは下り基調。営業時間中に道の駅吉野路上北山に着けた。秋刀魚寿司と燻製チーズで夕食。実はもう少し先にきなり館レストランがあって20時半LOだったのでそちらにも間に合ったのだが,19時半LOだと勘違いしていたので,手前の道の駅にした。三重県に入った。今日は4府県を通過。右折せずに直進するとファミマに行ける分岐点は,さほど空腹でなかったし先を急ぎたかったので右折。七色ダムが見えたが,写真チェック用の標識は奥だった。新宮のホテルにはなんとか今日中に辿り着けそうだ。

ところどころで登りが混じるし,下りは道幅狭いし暗いのでそんなにスピードがあがらない。etrex30xjの画面を見て,距離が増えるのだけが楽しみ。下り途中にあるという丸山千枚田の標識を見落とさないように見回して標識に到着。

国道42号線への看板が見えて,あと少しと奮い立たせるものの身体は正直なもので,それほど速くなるわけではない。街の灯りが見えてうれしくなってきた。いつもなら邪魔な信号ですら文明の証。県境となっている熊野川を越えて新宮に入って,熊野速玉大社に到着。まだ開いているラーメン屋があったが,ファミマで夜食を買ってサンシャインホテルにチェックイン。サイクリストにやさしい宿でそのまま自転車持ち込めると紹介されていた。部屋に入ったらライト,サイコン,スマホに充電。夜食のカレーとヨーグルトを食べて,風呂につかって,4時起きにアラームセットして寝る。

寝過ごさず4時に起きたが,準備に手間取って出発は5時前。フロント係のひとが慌てて玄関の灯りを着けた。27時間後にゴールに着けたらいいなと淡い期待を持って再スタート。途中のローソン勝浦町宇久井店はイートインがあったが,ファミマ那智勝浦店でペペロンチーノとプリン。これでコンビニとは250km先の高野町のファミマまでお別れ。1月の紀伊半島一周でも走った熊野那智大社への登り。今回は明るいので那智の滝もよく見える*1。やはり太平洋沿いだと山中よりも温かいようで汗かきながら,熊野那智大社参道入り口に着いた。結構ボトルの麦茶が減ったのでゴミ箱が併設してある自動販売機みつけて補充。

ここから玉置山の前哨戦のような3回の登り。もう焦ることなくマイペースで走る。前半は道は良かったが,中盤から穴は開いてる,水や泥が浮いている悪路に突入。四国基準でも悪路。ここまで比較的道は良かったのだが,この区間はひどかった。幸い傾斜のゆるい区間だったので,余裕をもって穴は避けられるのでトラブルにはあわずにすんだ。下って熊野川沿いに北上する。トイレに寄りたいと思ったところに瀞峡めぐりの里熊野川が目に入った。トイレによって売店を見ると奥に食堂がある。幸いあと10分ほどで開店なので,待ったあと熊野牛他人丼。食べ終わって少し走ると,玉置山への登りが本格的になる。一晩寝たとはいっても回復できるわけはなく,だいたい一割引くらいのパワーで登る。玉置山への分岐点まで600m登るだけ。1時間半ペダルを回し続ける簡単なお仕事。気温が上がって暑い。ジャージは春夏用にしておくべきだったかなと後悔しながら,ファスナー全開。日差しは厳しいが空気はカラッとしているので日陰になると涼しい。分岐点に到着。あと少しだけど10%を超える坂になるとまるで歯が立たない。頂上を越えて下りで石碑を見逃して,展望台まで行ってしまう。登り直して石碑前で撮影。

折り返しなので今度は下りの距離が増えた。十津川温泉への下りは道はいいが,ブラインドコーナーが多くて入り口では減速しなければならない。ブレーキ操作に飽きた頃にやっと十津川に着いた。BRM406泉佐野300kmの参加者とスライドする。向こうには逆走する怪しい参加者に見えたかもしれない。昼飯時なのだが,まだ他人丼のエネルギーが残っている感覚があるし,目に入った釜飯は時間かかりそうだったのでそのまま通過。緑の水面がきれいなダム湖をみながらゆるい登りをケイデンスだけ維持するようにして淡々と走っていると,熊野への下りに入る。途中で道の駅奥熊野古道ほんぐうの看板が見えるが,空腹感がなくルートから1km外れるので通過してそのまま熊野本宮大社に到着。バス停に並んでいる観光客を見ると日本人の方が少ない?石碑前で撮影して,バスターミナルでトイレを済ませて再スタート。

徐々に勾配がきつくなってくるいやな登り。とっくに脚は売り切れているので,インナー×ローで耐えて回すだけ。だんだんと日が沈んでくると心も沈んでくる。下りになるとちょっと気分がいい。国道から逸れて近露王子跡に到着。となりのカフェで観光客が楽しそうに談笑している。入口看板を撮影して折り返す。

国道との分岐点にあるAコープで買い物しようかと思ったが,1.5km先に道の駅がある看板が出ているので,トンネルを抜けて道の駅熊野古道中辺路へ。めはり寿司とじゃばらサイダーを補給。顔を洗って歯を磨いて気分転換して再スタート。県道に入って登りだすと途端に進まなくなる。いつもなら登れるはずの5%ほどの登りが10%超の激坂に感じるくらい。パワー3割減くらい。ぎりぎりとペダルを回して林の中を走ってきて,開けた場所に出てきたと思ったら放し飼いの犬が吠えながら追いかけてきた。山のほうに飼い主らしいひとが見えるが,いままでは住民くらいしか通らない道だけどSR600参加者がここを通るわけで,ちゃんとリード付けておいて欲しい。幸い噛みつかれるようなことはなく,単に威嚇のために吠えてるだけのようだった。しばらく並走するがテリトリーを外れると追いかけてこなくなった。トンネルを抜けると龍神村に入る。もうすぐ龍神温泉かと思ったら「15km」の看板。龍神村の大きさにげんなりする。龍神温泉でない場所に,結構大きめの旅館がある。飛び込みで泊まれるか確認しようかちょっと迷ったが,ダメだったときのタイムロスとがっかり感が嫌だったので通過。ドライブイン龍の里に電気がついていると思ったが,すでに閉店だった。龍神温泉への残り距離が減るのを見ながら走ると,やっと龍神温泉に着いた。ごまさんスカイタワーの登りに向けて休憩。すっかり暗くなった道の駅龍神で,ここまで430km以上運んできた菓子パンと柿ピー食べる。龍神温泉を過ぎると,交通量も街路灯もほとんどなくなる。登りだけなら,周りがみえない夜のヒルクライムは嫌いじゃない。ライトに反射する200mおきの距離看板を見ながら走るだけ。シッティングで走ると腰が焼け付くように痛い。ダンシングを混ぜるが,いまいちギアが合わない。シフトアップするとダンシングでも重いし,ギアを落とすとダンシングには軽すぎる。もちろんシッティングには重すぎる。100mごとに交互に走る。距離看板が200mおきにあるのは分かったが,看板の数字の意味はまったくわからない。見通しのなさに胃がむかむかしてきた。寒くて汗はかいてないのにのどがかわく。いくつのコーナーを曲がったのかまったくわからないし,距離看板をいくつ通過したのかわからないが,とにかく標高1000mの看板までたどり着いた。あと200m登ればいいのか。標高1100m,標高1200m,まだ頂上じゃない。頂上付近の駐車場に車を止めているひとから「頑張って」と声をかけられる。「あと少しなので頑張ります」と返事したが,あと少しが長かった。しかもごまさんスカイタワーは頂上のさらに向こう側。やっとごまさんスカイタワーに到着。売り切ればかりの自動販売機でコーンスープを買う。甘しょっぱさがうまい。防風防寒ジャケットを着て,指付きグラブに交換。

次のPCまでダウンヒルだと思っていたが,3kmくらいで登り返しが混じり始めいまいちおいしくない。緩斜面になると平坦とあまりかわらない。国道から市道に入ったころに,後輪ががたついた。夜なので突き刺しなのかサイドカットなのか原因見分けるは面倒だし,時間がかかると身体が冷える。チューブとタイヤをまるごと交換。去年の四国600kmのようなパンク頻発はもう嫌だ。ついでにお腹と背中にカイロを貼っておく。ダウンヒルというよりもアップダウンの連続する平坦の思えた区間を走って熊野参詣道小辺路についたはずなのだが,看板が見当たらない。街灯のあたらないところにあった。

そしてまた登りが始まる。距離にすると2kmもないのだが,それが長い。護摩壇山では100mごとにダンシングとシッティングを混ぜられていたのがどんどんと短くなる。ダンシングではシフトアップすることすらめんどくさいのでインナー×ローのまま,だらだらと登る。やっと下りに入ったと思ったらまた登り。そしてまた下りになったと思ったのに登りが始まる。目の前に鹿が横切る。基本的に遠ざかる方向に走るので大丈夫なのだが,たまに横切ろうとするチャレンジャーがいるから気が抜けない。崖を登れず落ちてきたのが,こちらを向いたときはこっちに突っ込んでこないかひやひやした。県境を越えて和歌山に入った下りで,右斜め前からフロントホイールに突然黒いたぬきが突っ込んできた。幸い落車せずに済んだが,ヒヤッとした。びびって慎重に下る。そして平坦のように見えるがゆるい登り。じれったいくらい進まない。やっと高野山の街並みに入った。金剛峯寺に到着。隣の公衆トイレに立ち寄って,待ちに待ったファミマ。レンジアップした赤飯を豚汁に入れて温まる。1週間控えてきたホットコーヒーで眠気予防。

ここからがボーナスステージのダウンヒルなのだが,コーナーが連続するので飽きてくる。しかも似たようなコーナーなので同じ場所をぐるぐる回っている気分。GPSのルートは外れていないので間違っていないと信じて進む。標高は下がっているのだが,下りで寒い。足先がしびれてきた。耐えきれないわけではないが,寒さを感じることが嫌。ローソンが見えたので,ホットチョコレートで指先を暖める。海南への距離が減るのだけを励みに走って,紀伊半島一周のゴール前に見た松屋の角が見えた。橋の登りを越えて下るとマリーナシティホテル。いまからチェックインして10時くらいまで寝させてくれないかなと思った。

海沿いを走って加太の看板が見えた頃に,セブンによってサンドイッチとコーヒーで朝食。これが最後の補給。海岸線を回り込んだところで山の上に見える建物。あそこまで登るのかと思うとげんなりする。登り距離は1kmなのだが,13-14%の傾斜の前にはダンシングでなんとか前に進めるくらい。コーナーはなるべく外側を通って到着。あとはりんくうタウンに戻るだけ。

ここからは信号峠。時間の余裕はあるし,見通しのいい道なので信号の変わるタイミングにあわせて流して走る。それでも快調に進む。これくらいのアップダウンなら苦にならない。最後は2か所の橋は側道なので流して走って二日前に出発したセブンイレブンに到着。快調なら朝に帰ってこれるかと思ったが,疲労やパンクでそうはうまくいかなかった。

輪行状態にしてりんくうタウン駅に着くとJR関西空港線が不通なので,南海線からの乗り換えをしなければならない。日曜日の午前なので御堂筋線も先頭車両に入れた。新幹線はみずほの自由席なので最後尾席確保。岡山でしおかぜに乗ったらあとは寝過ごす心配はない。

PCごとの制限時間に対する余裕時間の推移が以下のグラフ。PC13-15が平均時速10kmペースでパンクや疲労で最悪の状態。玉置山(PC9-10)やごまさんスカイタワー(PC12-13)でも時間は稼げてる。初日は時速15kmペースで来れたが,二日目からはペースが上がってない。NPは初日の1割引。三日目はさらに1割引。

朝スタートだと初日は新宮-紀伊勝浦で宿泊して,二日目龍神温泉宿泊が夜間走行時間を減らせて一番いいプランだろう。オーバーナイトが嫌いではないひとなら,夜スタートで345kmの十津川温泉か362kmのPC11熊野本宮大社で1泊というのもありかもしれない。序盤はコンビニ多いので深夜走行でも補給可能。PC5-6の90kmを無補給で走ることになるが,路面はいいし,自動販売機はそこそこある。PC11を早朝出発すると,残り240kmをそのままゴールしてもいいし(今回は18時間半かかってる),高野山から休暇村紀州加太のどこかでもう1泊する選択肢がある。

どちらのプランにしても温泉旅館は週末で観光シーズンだといい値段するし,一人客用向きじゃない旅館が多いのが問題。しかも深夜チェックインで未明チェックアウトができるかどうか。

今回のSR600は,コンビニとビジネスホテルのおかげでブルベがいかに快適に走れているかのいい体験となった。

 

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PCごとの余裕時間推移
  距離 到着時刻 区間経過時間
PC01 0.0 2019/4/5 9:00 0時間00分
PC02 23.6 2019/4/5 11:19 2時間19分
PC03 48.4 2019/4/5 12:48 1時間29分
PC04 78.7 2019/4/5 14:37 1時間49分
PC05 99.4 2019/4/5 16:01 1時間24分
PC06 188.4 2019/4/5 21:01 5時間00分
PC07 207.4 2019/4/5 22:07 1時間06分
PC08 231.5 2019/4/5 23:22 1時間15分
PC09 253.4 2019/4/6 6:21 6時間59分
PC10 334.0 2019/4/6 12:45 6時間24分
PC11 362.0 2019/4/6 14:14 1時間29分
PC12 384.7 2019/4/6 15:47 1時間33分
PC13 450.4 2019/4/6 21:37 5時間50分
PC14 470.5 2019/4/6 23:36 1時間59分
PC15 495.2 2019/4/7 2:05 2時間29分
PC16 549.3 2019/4/7 5:24 3時間19分
PC17 574.6 2019/4/7 7:03 1時間39分
GOAL 603.1 2019/4/7 8:35 1時間32分

 

*1:キューシートには「303.9km右手に那智の滝」とあるが,3.39km先の間違い?