ブルベも始めました

2016年からブルベも始めました。

PBP2019:Quédillac to Goal

Quédillacの仮眠所はマットレスにちゃんとした毛布,荷物置きを兼ねた椅子と申し分ない設備だった。レスキューシートいらずで,ポーチだけを腹にいれておくだけでそのまま寝られた。ぐっすり眠って4時前にちゃんと起こしてもらった。貯金は1時間を切ったが,残り370kmを31時間で行けばいいので,よほどのトラブルに見舞われないかぎりいけるはず。

ノドが痛い。熱があるわけじゃないので,仮眠所が乾燥していたためか。外はやはり寒い。夜露でハンドルまわりはびっしょり濡れている。一緒に走っていたひとと再スタート。だが,町のはずれまで来たところで後輪の空気圧が低いことに気づいた。先に行ってくださいと声かけて,とりあえず空気を補充した。しかし,1時間も走らないうちにまた空気圧が低下している。タイヤを一通り見まわしたが,これといった傷が見当たらないので,チューブだけ交換。それもまた1時間ほどで空気圧が低下。これはタイヤに異物がささっているなと,タイヤとチューブを交換。最初からこうしておけばよかったのに,ちょっと決断が遅くなっている。寝起きで身体が動かないことに,パンク対応もあって1時間くらい余分に時間を使ってしまった。

PC9 Tinteniacに到着。Controlでチェックを受けたあと,2階にあるレストランへ。ここにパリ・ブレストがあった。朝食時ということもあって,ここが一番並んだ時間が長かった。それでも10分ほどで会計。パリ・ブレストの味は甘くなくてあまりわからなかった。むしろブドウが甘くておいしかった。あとコーヒーが薄い。レストランで一番よくわからなかったのが,コーヒーの頼み方だった。注文窓口があるところとないところがあった。ないところはどこかでいえばいいのだろうが,それをすることが煩わしい。あと,ボウルででてきて飲みにくい。

 

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食事が終わったあとで,1階のメカニックサービスでタイヤを買う。700×25c clincher tireとメモ帳に書いて見せると,自転車持ってこいと言っているようだったが,什器にかかっているタイヤを見つけて,"S'il vous plait."。練習用タイヤでちょっとぶ厚めでかさばるが,保険のために1本持っておかないと。チューブはまだ6本あるので問題ない。

ほぼ貯金0で再スタート。後輪の重量バランスがくるったようで,下りでぼわんぼわんする。パンクの原因は取り除かれたようで,1時間経っても空気圧は変わらない。途中のちょっとした丘の頂上で,初老の息子とその父の二人組が"Coke!"と声かけてくれたので,遠慮なくもらう。冷えてるコーラがうまい。"水いるか?","ありがとう"とボトルを開けて注いでもらう。"中国からか?","いや日本だ","中国のさらに向こうだな”,"そうだ,さらに海の向こう側だ"。初老の息子とお互いぎこちない英語で話しをすると,息子が父親にフランス語に伝えている。"Merci beaucoup."と礼を言って出発。

コーラのおかげか,単なる気のせいか脚が回りだす。やっと集中して走れるようになった。町の入り口となる坂を上ると,Fougeres城が見えてきた。ちょっとだけコースアウトして城がよく見える場所から撮影してコース復帰。

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フランスの町はどこも坂なんだけど,Fougeresは結構キツい方。サポートカーらしきキャンピングカーが並ぶ町中を通り抜けて,PC10 Fougeresに到着。1時間強時間を稼げた。防風防寒ジャケットを脱いでサドルバッグにしまうが,タイヤが大きくなったせいか,サドルバッグ容積ぎりぎりになってしまった。おかげでおにぎりリフレクタが後輪にこするようになった。結局おにぎりリフレクタはゴールするときにはぼろぼろになっていた。

変わり映えしないパスタとリンゴとヨーグルトの食事を済ませて再スタート。しばらく走っていると,日本人と一緒になる。よく見ると近所の大学のジャージ。去年のBRM519四国300kmで一緒になったひとだった。まだ20代だから60歳までに10回出られる。うらやましい。でも彼がひとりPBPに出てる一方で,彼の所属するサークルは仲良くバーベキューをやっていたのだった。さらに2人の日本人と合流して集団を形成しながら走った。だんだんと気温が上がってきて,蒸し暑くなってきた。登りでついていくのが厳しくなってきたし,眠気が襲ってきた。追走をあきらめてさっさと道端で寝ることにする。畑への引き込み道の傍で寝る。1時間ほど寝るとすっきりした。

後ろから集団がやってきたので,後ろにつかせてもらう。ちょうどのペースで気持ちよく走れるが,救急車が後ろから追い抜いて行った。しばらくすると,さっきの救急車が止まっていた。フランス人が転倒して横たわっていた。意識はあるようだったが,チームメイトがそばで見ている。なんてことのない見通しのいいゆるい下りところで,走りなれてそうなひとでも事故を起こすとは。今日の気温の高さのせいかもしれない。後ろから大集団がやってきた。Ludeacとジャージに書いてあるから地元チームの集団とその後ろには一般参加者がくっついている。これ幸いと後ろにくっつかせてもらう。すげー楽。このままずっと走っていってくれたらと思ったら,あとPCまであと20kmほどのところでチームは休憩といって,右の側道に逸れていった。集団の半分はそれにつられてコースアウト。さっさと左側によけておいて正解だった。ここで一旦集団の再編成。集中力が切れた者もいるようで残された者の半分くらいしかいなくなった。ドイツ人二人がほとんどひっぱってくれる。最初は体格の差で気おくれすることもあったが,この頃になると基本の走力はほとんど一緒の者同士なので,気楽に走れる。

やっとPCが近づいてきた。コーナー曲がると沿道に人だかり。DJのコールが聞こえて,大歓声。ツール・ド・フランスのゴールのようなシーンだった。うれしくて両手あげてゴールしてしまった。Controlへの階段でも"Japonais"の声がかかる。チェックを受けたあとにレストランの場所を聞いたら,ボランティアの小学生が呼ばれてレストランまで案内してくれる。レストランの入り口にはサイクリスト優先の看板。トレイも注文も全部ボランティア任せ。ちょっとむずがゆいくらいの歓待ぶり。もうここでゴールでいいじゃないかと思った。でもあと1ブルべ残っている。貯金2時間半。ノンストップなら夜明け頃にゴールになるから最終PCで寝てから朝にゴールでいいだろう。


PBP2019 PC11 VILLAINES-LA-JUHEL

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名残惜しいが再スタート。町を外れると単調な景色に変わる。地平線の向こうまで伸びる道。そこにぽつぽつと先行する参加者の姿が見える。PC11の観客の熱にあてられたか,やる気が湧いてきてさくさく進む。地平線の彼方まで追いつこうと脚が回る。途中で「四国の方ですか?」と声かけられる。「めずらしいジャージ見たなと思いまして」とさすがレアキャラジャージ。「秋に四国1000kmありますから,ぜひ」と紹介しながらしばらく走る。直線なのにアップダウンがあるので,目の前にはちょっとした壁のように登りが見える。なぜかここで行こうとダンシング開始で勢いつけて登りを越えてそのまま下りに突入して,加速。下りに入ると遠くに見える参加者。追い抜こうとさらに回す。まるでゾーンに入ったように集中して走れた。だんだんと日が落ちてくるなかアップダウンを繰り返す丘陵地帯を走ることがすごく気持ちいい。実際この区間平均速度が1.2km/h上がってる。日没とほぼ同じ頃にPC12 Mortagne-au-Percheに着いた。ここは往路のwpだったが,なんか見慣れない。こんな建物あったけ?と思いながら,夕食。パスタにターキーの取り合わせ。ターキーがもそもそしているかなと思ったが,ソースが絡むので問題なかった。

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4時間以上貯金があるので,まずPC13 Dreuxに行って時間調整することに。だが,ここまで快調に走ってきた反動で,進まなくなってきた。しかも首が痛くなってきた。5月以降ブルべを走っていないつけが首にきたようだ。下ハンどころかブラケットすら前傾がきつくて痛い。仕方がないのでフラット部分でなるべく身体を起こして走る。日が沈んでまた寒くなってきた。途中の町の街灯の下でジャケットを着るついでに首と肩に湿布を貼る。薬効成分が効いてきた。残りは10km/hでも進めば間に合うのだが,寒くなるのでちょっとでも速度を上げて早く着きたいし,発熱量をあげたい。登りでダンシングまぜたり下りでアウター×トップで踏み込んだりとやってみるが,やはりペースがあがらない。ちょっと歯ごたえのある登りをクリアしたところで,ベロモービルが止まっていた。スマホから音楽ながしてご機嫌のようで,トラブっているようではなさそうだ。フロントライトの明かりと音楽に誘われて,ちょっと止まって水飲んで補給食食べると,ベロモービルのドライバーが独り言のように話しかけてきた。"ここからはダウンヒルが続く。シューティングスターのように走れる" ,"ベロモービルはほんとシューティングスターのように下っていくな。幸運を!"。そうしたら,ピンバッジくれた。"Bon voyage!"。

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あっという間に見えなくなるベロモービル。さてこっちも行くかと思ったら後続の集団がやってきた。助かる。コースの先がわかりやすくなった。ついていく。ここまで苦しんだのはうそのような下り基調の25km。さすがに飽きる。あと20kmくらい。先行のテールライトだけを目標に,ペダルを回す。集団を目指して走って,追いついて混ざっている間は首の痛みを不思議と感じない。誘導員の反射ベストが見えた。PC13 Dreuxに着いた。

ここは食事がいいと書かれていたが,未明ということもあってラザニアがなかった。オムレツはもうすぐできるというので,オムレツ。そういえばハムをのせたパスタを食べられなかったなとちょっと後悔。食事をしていたら,羽田で会ったひとにばったり会う。ベンチで寝ていたそうで,「死んだ顔しているよ」と言われた。証拠に写真撮ってもらったが,なるほど死んでる。1日5時間以上寝てたんだけど,やはり疲労は隠せない。朝まで寝ようと,仮眠所を案内してもらう。ペラいマットの上に雑魚寝。無料なのはいいが,朝6時に起こしてくれと頼んだのに,なぜか朝4時に起こされた。さっさと出ていけという雰囲気だったし,眠気はないので出発の準備。

ホットチョコが飲みたくなったので注文したら,準備中で待たされる。だんだんと人が増えてきた。レストランの隅で寝てる者はあいかわらず減らない。やっとホットチョコが出てきたので,飲み干して覚悟を決めて再スタート。

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 あと45km。のんびり走っても3時間。でものんびり走っていると気温がどんどん下がってくる。暖かい空気の層と冷たい空気の層を行き来する。登っているのに暖かくなったり,下っているのに寒くなったりと走行感覚と体感がずれて気持ち悪い。徐々に東の空が明るくなってくる。ほぼ平坦路。PBPに平坦がないといったのは誰だ。嘘じゃないかと思いながら,走っていると後ろから追いついてくる者がいた。"今何キロだ?"と聞かれたので答えようとするが,とっさに数字がでてこなかった。4桁数字を英語に換算する知能はもう残ってない。"1194km。あと25km”。"どこから来た?私は日本だ","フィリピンからだ","寒くないか?","寒いよ。おまけに眠い"。そのわりにパワフルな走りで先頭交代しながら距離稼ぐが,さすがに眠気が上回ったらしい。"眠いから寝るよ。Good Luck","Thanks, see you later."。先頭交代しながら走ったおかげで身体が動き始めて,脚が回り始めた。変わり映えのしない平坦路をもくもくと走り続ける。今日が一番寒いんじゃないかと思う。林の中の道にきて,ゴールが近い。追いついたアメリカ人とエールの交換。"走り終わったら寝るぞ寝るぞ寝るぞ",”そうだ。シャワー浴びてベッドで眠れる。俺たちやったな!"。

Rambouilletの街中はやはり走りづらい。門の石畳がきつい。そこからゴールはすぐかと思ったら意外と遠かった。早朝なのにゴールゲートで声援もらう。そして最後の石畳。ここの石畳を抜けてセンサーを越えて終了。


PBP2019 to Goal