ブルベも始めました

2016年からブルベも始めました。

PBP2019:Rambouillet to Carhaix-Plouguer

Eグループが出発したので,後続のGグループ列が待機列形成。そこを遅れたEグループ参加者が横切るというカオスぷり。目の前のFグループにも遅刻のDやEのプレートが混じってる。80時間組の後はFグループのスペシャルバイク。タンデムやミニベロ以外に,カーボンモノコックリカンベントFerrariのまがい物"FerriRari"のvelomobileと日本では見られない珍しい車体のパレード。

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いよいよGグループのスタート。道の先のテントでブルべカードにスタンプ。スタートゲートに並ぶ。道の両側には観客。"Japonais?" "Oui,bonjour" "何言っているのかよくわからない" "Merci, Au revoir." 夜間走行に備えて,テールライトを点けておく。

17:30に向けてカウントダウンが始まり,"Trois, Deux, Une, ……"で正確にスタート。前が動いたので正式にセンサーまたいで計時開始。スタートの門からはちょっと石畳。まわりとの間隔を保ってラインを保持して走る。町を抜けて郊外のアップダウンが続くようになると集団が活性化して速度があがる。路肩ではすでにパンクしている者もいる。ある程度集団が固まってきたので,じわじわ後ろに下がる。レースじゃないし,プロじゃない者同士が走っているので事故は常に起こりうる前提で集団の中にいるよりも後方にいるほうが気が楽。追いついた者は積極的に間に入ってもらう。郊外はカーブも緩いし,路面も悪くないので走りやすい。町に入ると,コーナーが増えるし,中央分離帯バンプ,幅員減少,歩道との段差と走りにくくなる。しかも道に穴が開いてたりする。

見通しのいい郊外では集団後方で走れるが,町中では距離をおいて若干ちぎれ気味くらいの位置をとる。それでも十分ついていける。まわりのペースに飲まれてガンガン行こうぜプランでいける。時計みながら給水もできてるし,補給食も食べる余裕がある。一時間も走ってくるとさすがに先頭引っ張っている人も疲れたのかペースが落ちてきた。一方で,ちょっと前に集団からちぎれたと思った人が戻ってきたりしている。ある程度脚のそろったメンバーだと思うので先頭交代にも出てみる。ラインを守って一定ペースでじんわりと踏みまわす。ジャージ引っ張られたり,押されたりしないので問題はなさそうだ。10分めどで先頭を代わってもらう。追いついたり,追いつかれたりと集団は大きくなったり小さくなったりを繰り返す。基本集団最後尾にいると後ろからくる集団に乗り換えしやすい。

カフェが露店を出していて,水やコーラ売っていて,ここで集団がばらばらになる。焦ることなく後続待ちでたらたら走ると,ちゃんと次の集団が来る。また最後尾について走る。1本目のボトルが残り少なくなってきたころに,今度は私設エイドがでていて,水をかざしている。"Aqua, s'il vous plaît."

ボトルも満タンになったので,wpまで行けるだろう。また郊外に抜けるとちょっと斜め前から風が吹くようになる。風下になりたいなと思ったら,風下側に後続からついてきたひとたちが伸びていて,ちょっと入れそうにない。しょうがないから道が曲がって風向きが変わるまで風上側で辛抱。

来る前に読んだ記事では外人は登りはさっさとインナー×ローに落とすとかあったが,そんなことはなく,むしろダンシング混ぜてガンガン登っていく。こっちは登りの半分くらいで脱落して下りで追いつくを繰り返してる。

後続からやってきたアメリカ人に「お前はアスリートなのか?」と聞かれて「いや違う」「ペダリングがきれいだぞ」「ありがとう」というと,そのアメリカ人はさっさと集団を追い抜いて行った。アメリカ人もお世辞を言うんだな。ペダリングモニターではマイナスベクトルがはっきりわかるダメペダリングですよ。

すっかり暗くなって,真っ暗闇と前方にはテールライト,後続からまぶしいばかりのフロントライトだけの世界。登りにかかるとタンデムやリカンベントが苦しそうに登っていくのをパスしていく。集団最後尾に位置して,ペースは任せたまま。もうちょっと速くてもいいかなと思うけど,先は長いのでコバンザメ走法。

何度目かの町に入って,反射ベスト着た係員に誘導される。やっとWPに到着。118kmを4時間半。2時間くらい貯金稼げた。手前のコーヒーだしているテントを横目に,まずは柵に自転車を置いて,ボトルを持って,屋台に行く。メニュー表のある窓口に行って,指差しながら"Jampon sandwich, Coke, Aqua,s'il vous plaît." なんとか通じたようだ。サンドイッチとコーラとペットボトルの水が手に入った。計算する気力もないし,硬貨を見分ける力もないので,10€札だしておつりをもらう。フランスパンなので硬い。コーラで流しこむようにして早食い。ボトルに水を足して,ジャージのポケットからアミノバイタル補給。再スタート。どっちに向かうかわからなかったら,係員に"Brest?"と聞いてみたら逆方向を指さされた。どうやらWPの中は一方通行になっているようだ。

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再スタートして,PC1に向かう。町中は街灯があって明るいが,郊外に出ると真っ暗。遠くの先までテールライトが見え隠れする。緩い登りが続く。周りに誰もいないと思ったが,走っているうちに先行に追いつく。すると先にまたテールライトが見える。前に見えるテールライト目指して走り続ける。快調に走っていると,下りで追い抜かれる。登りで追い抜いたタンデムに下りで抜かれた。圧倒的な速度差。登りで差をつけないと下りで抜かれるので,登りの終わりだとタンデムに先を譲るようになった。平坦だと同じくらいなので,先頭を牽くこともあったが,どうも私の先頭は好まれないようで,先頭牽いていてもついてもらえないことが多い。振り返ってもいないことが結構あった。

暗闇の中走り続けながら,2時間に1本くらいのペースでエネ餅とスポーツようかん食べているが,もう飽きてきた。麦茶か緑茶で口をさっぱりさせたいが,そんなものはない。走るのに飽きてきていろいろ雑念がわいてきた。ひっぱってくれるトレインも来ないまま走り続けて,なんとかPC1にたどり着けた。5時間くらいの貯金。自己最速かと思ったが計算間違えていた。普通の走りだった。

初めてのPC。自転車置き場からControlへは矢印で示されていてわかりやすいが,PC全体が広くで歩かされる。ここでもサンドウィッチとコーラに水だけ買って,先を急ぐ。テールライト目指して走るだけを繰り返す。実は意外と走れるじゃないかとうぬぼれていると,2時間経過したくらいから脚が回らなくなる。ハンガーノックというわけじゃないけど,頑張った2時間分のツケが回ってきたような感じ。それでも先に見えるテールライトを目標に走って,夜が明けてきて明るくなったころにPC2に到着。300kmブルべだとすると15時間切れてるのでいいペースだ。ちょっとトイレ待ちした後,Controlでスタンプもらう。ここのレストランで食事したはずなのだが,写真撮り忘れている。

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ここから先はPCやWPまでの距離が短くなる。昼間暑くなるといっても2ボトルが空になる前にたどり着けそうでちょっと安心できる。Fougeres城を通過して写真撮っておけばよかったかなと思ったが,帰路でいいやと言い聞かせて,町を外れる。町を出るとあとは変わり映えのしない景色を走るだけ。四国ブルべのように誰にも会わないというわけではないが,トレイン乗り換え放題というほどの人もいないわりとまばらな状況。ちょっとでも気を抜くと後ろから抜かれるが,前を追い抜く目標が少ない。乗り切れないまま走り続ける。追いついた人とは脚が合わないし,後ろにもついてくれない。せめて後ろについてくれたら牽くモチベーションもわくのに。あがきながら走ってPC3に到着。貯金はちょっとだけ増えたが,ペースは落ちてきている。このPCも写真撮り忘れている。現金の入った防水ポーチをなくしたと思って冷や汗かいた。実際は防風防寒ジャケットのポケットにスマホの入ったポーチ,下のAudax Japanジャージに現金の入ったポーチを入れていただけだった。気温も上がったので防寒防風ジャケット脱いで,サドルバッグにしまう。

次のWPまでは26kmしかない。といっても1時間以上かかるわけで,単独走でだらだら走る。もう序盤のような集中力はない。積算距離が増えるのを楽しみに走るだけ。やっとWPに着いた。ソーセージを焼くにおいがたまらない。ソーセージのガレットとオレンジジュースで軽めの昼飯。テントの奥に仮眠所の貼り紙がある。帰路はここで寝るのもいいかもしれない。

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 食事のあと1時間ほど,まったく進まなくなった。1時間経つと脚が回りだす。まったくずぶくなったものだ。オレンジジュースのおかげが1時間経つと回りだす。残り2時間頑張れば今日の目標のLoudeac。でかい風力発電プラントが見えるので,風が強い地域らしいが,さいわい風に悩まされることはなかった。悩みは牛糞のにおい。Loudeac周辺が臭いってことはこの周辺は畜産の地域なのだろう。郊外の路面は基本的にいいのだが,ところどころ荒れ気味で跳ねる。1kmも続くわけないので,辛抱するしかない。登りが続くと,リカンベントとタンデムに追いつく。緩斜面の下りならなんとか後ろにつけるが,結局次の登りでお別れだ。そして次の目標目指して走る。もうすぐLoudeacかなと思って丘を登るのだが,さらに向こう側に広がる平原。町らしいものは見当たらない。etex30xjのマップを小縮尺にしてゴール地点が見えないかなといじってみたりする。だんだん眠気がやってきた。天気もいいし,路肩だと気持ちよさそうに寝られそうなので,さくっと寝てみる。「行き倒れがいるよー」と日本語が聞こえたような気がして目が覚める。1時間ばかり寝てすっきりした。

あと10kmほどなのになかなか町らしいところが見えてこない。町に入ったけど,Loudeacじゃなかったを繰り返して,やっと来たよLoudeac。なんだこの観客の多さは?まずは自転車止めて,右手を見ると見慣れた青いバッグが並べられている。まずはControl。途中で"Japonais?"と呼び止められる。"オレの日本の友達を紹介する"と話しかけてくる初老の男性。"Controlチェック受けた後でいいかな"とまずはControlにスタンプ押してもらう。出ると先ほどの男性が待っていた。そばに立っているジャージの男性を指さして"〇〇っていうのだが,知っているか?"と聞いてくるが,もちろん知るわけがない。"日本人だけで400人以上参加しているので,知り合いじゃないほうが多いんだ" "そうか"と別れた。

レストランで食事して,ドロップバッグのところに戻る。食べたばかりなので,柿の種とか食べたいとは思わない。チェーンにオイルさして,ドロップバッグに戻り,トイレに行って戻り,電池・バッテリの交換をしてと気がつくと着いてから2時間が経っている。やっとシャワーセットと着替えを取り出して,シャワーに行く。ぬるいお湯というよりちょっと温まった水くらい。持ってきていたシャンプーとボディソープで汗を流して,不織布のようなタオルで拭いて,オロナインとプロテクトJ1を塗って着替える。着替えた後のアンダーウェアが発酵しないことを祈りながら袋詰め。日焼け止め塗ったが,リップクリームを忘れていたことが発覚した。シャワー室を出るときに"À demain(また明日),au revoir."というとちょっとウケた。まだ日があるので,76km先のPC5までは余裕。165km先のBrestまで行くと,みんなが写真撮っている橋が真っ暗で何も見えなくなるので,やはりPC5で寝て,朝にBrest着で行くことにする。

ここまで時速20kmペースで走れているので,スケジュールは読みやすくなった。2時間で次のWP。途中で先頭とみられる3人とスライドした。走りもそうだけど,装備の身軽さもまさに別次元。この後も80時間組とスライドするが,小集団で前方だけ見て走っている。そのスタイルは競技としてのブルべ。

なんとか日が落ちる前にWPに着いたが,予想にもあった通りシークレットPCだった。コーラだけ飲んでさっさとPC5に向かう。PC5で寝よう。寝る時間作り出すためになるべく速く走ろうと再スタート。

あと1時間半で寝られる。飯食って寝よう。それだけ考えて走った。昼寝が効いたか,脚は回る。風もない。はるか前方に見える先行する集団を追いかけるだけ。そうしていると後ろから4人組が追いついてきた。後ろにくっついて走っていると緩い下り直線で,35km/hくらいでいいペース。たまに先頭を牽いていた。なのにアメリカ人が「ローテーション回してスピードあげていこうぜ」とペースを40km/hまであげやがった。他の3人もノリよくローテを回し始めた。2列縦隊で右回りでローテーションしていくのだが,最後尾から左側によってあがっていくのが間隔あげすぎて,うまくいかない。近づきすぎてハスって転倒するくらいなら,間隔あけて脚使って埋めにいくほうがましだ。「お前ら,技量のわからない東洋人をよくローテーションに組み込もうと思ったな」と聞かれないように愚痴こぼしながら,3巡ほど回ったところで右折分岐になったのでローテーション終了。ちょっとほっとした。刺激的な時間が終わって,また平穏な状態に戻った。こうなると他よりも背の低い私は先頭に出てもわりと早めに代わってもらえるというか代ろうと前に出てこられる。そりゃ風よけにならないもんね。日が沈んで寒くなってきたころにPC5に到着。Controlでスタンプ,レストランで食事。ここで初めてパスタを食べる。つくりおきのボロネーゼ。塩かけないと味がしない。塩かけるとまぁ食べられる。アルデンテ至上主義じゃなければ食べられる。むしろべちゃっと甘くない分,日本のミートスパゲティより食べやすい。

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さて,仮眠所はどこだろうと看板みると,グランド横切って降りた先だった。順番待ちの列ができていて大丈夫かなと思ったが,寝る場所は取れた。起床時間は「午前4時」を翻訳ソフトでフランス語にしてみせた。体育館に薄い白いシーツにくるまって並べられているのは遺体安置所にしか見えない。反射ベストから使い捨てカイロを取り出して腹と背中に貼って,背中のポーチ二つを腹に入れて,エマージェンシーシートかぶって寝る。予定では午前4時に起きて朝飯くってスタート。